「辞めない会社」に共通する3つの力とは？｜3年後の定着率100％の秘密

入社して3年の間に辞める人は、全体の3割を超える――厚生労働省の統計が示す現実です。

けれど、一方で「3年後の定着率が100％」という会社も存在します。
なぜ、同じように新卒を採用しても結果がここまで違うのでしょうか。

答えはシンプルです。
辞めない会社には、「人を育てる」「支える」「信じる」仕組みがあるのです。

教育とキャリア支援が長期的に整っている

「入社したら終わり」ではなく、「入社してからがスタート」。
そんな考え方が根づいている企業ほど、社員は長く働き続けます。

たとえば、通信教育や資格取得の補助制度。
あるいは社員の立場や経験年数に合わせた研修を行い、数年後の自分を描ける仕組みを整えています。

さらに、入社間もない社員にはメンター制度（先輩がつくサポート体制）を導入。
不安や悩みを抱えやすい最初の3か月に面談を行い、成長を一緒に振り返る企業もあります。

「自分を見てくれている」という安心感が、人を職場にとどめる最大の力です。

仕事と生活の両立を支える制度がある

もう一つの大きな柱は、「働きやすさ」。

産休・育休・短時間勤務などの基本的な制度に加え、最近では在宅勤務や柔軟な勤務時間制度を採用する企業も増えています。

育児中の社員が「キャリアを諦めずに働ける環境」を整えることが、結果的に定着率の向上につながっています。

たとえば、育休取得率100％を維持する企業では、復帰後のサポートも万全。
仕事と家庭の両立は、いまや「特別な配慮」ではなく「当然の前提」となりつつあります。

社員にとっていちばんの福利厚生は、「安心して働ける環境を整えること」です。

評価とキャリアの見える化が進んでいる

努力が報われると、人は自然にやる気を出します。
逆に、評価の基準が不透明だと「頑張っても無駄」と感じてしまうものです。

定着率の高い企業では、評価の仕組みをオープンにしています。
どんな行動が評価され、どんなスキルが次のステップにつながるのか。
その道筋を明確にするのです。

さらに、社内公募や表彰制度を設けて、社員が自分のキャリアを「選べる」ようにしています。
人事評価を、単なる査定ではなく「成長を見える化するツール」とすることで、社員の挑戦意欲を支えています。

人間関係が良く、相談しやすい風土

どんなに制度が整っていても、職場の空気が悪ければ人は辞めます。

「上司に話しかけづらい」「チームの雰囲気が重い」といった環境では、どんなサポート制度も活かされません。

一方、定着率の高い企業には、共通して風通しのよい文化があります。

たとえば、朝礼での意見共有や、上司が雑談の中で声をかけるといった小さな工夫。
こうした日常のやり取りが「ここにいてもいい」「居心地がいいな」と感じさせるのです。

制度は働くための「土台」、人間関係は毎日の「支え」。
この両方がそろってこそ、社員は安心して力を発揮できます。

採用段階でミスマッチを防いでいる

意外と見落とされがちなのが、「採用前の伝え方」です。
厚生労働省の事例でも、入社前に職場見学や社員との座談会を行い、仕事内容を具体的に理解してもらうことで、ミスマッチを防いでいる企業が紹介されています。

人は、「理想の会社」と「現実の会社」のギャップが大きいほど、早く離れてしまう傾向があります。
だからこそ、誇張した採用PRよりも、等身大の情報発信が信頼につながります。

きれいごとではなく「実際にどんな働き方になるのか」を正直に丁寧に伝える企業ほど、入社後のギャップが小さく、結果として定着率の高い職場をつくることができます。

辞めない会社に共通する「3つの力」

これらの共通点を整理すると、辞めない会社には3つの力があります。

人を育てる教育力

社員の成長を段階的に支える仕組みです。新人には基礎スキルやビジネスマナー、中堅にはリーダーシップやマネジメント力といった、立場や経験に応じた研修を行います。
成長を実感できることで、社員のやる気と定着意欲が高まります。

働きやすさを整える制度力

産休・育休、柔軟な勤務時間、在宅勤務など、生活との両立を支える制度です。
制度が整っているだけでなく、実際に活用しやすい環境であることが重要です。
安心して働ける環境があるからこそ、社員は長く会社にとどまれます。

風通しの良さをつくる文化力

人間関係や社内の雰囲気を指します。
上司や同僚に相談しやすく、意見が言いやすい職場は、日々のストレスを軽減し、早期離職を防ぎます。制度だけでは補えない「心の安心感」を生む要素です。

この3つがそろうと、社員は「この会社で成長できる」と実感し、自然に定着します。
逆に、どれか一つでも欠けると、教育や制度だけでは社員をつなぎ止めることは難しくなります。
つまり、制度と教育と文化のバランスが、長く働き続けられる会社のカギなのです。